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大阪地方裁判所 昭和56年(わ)1135号 判決 1981年8月27日

主文

被告人を判示第一の罪について懲役二年に、判示第二の罪について懲役一年に処する。

押収してある回転弾倉式改造けん銃二丁(昭和五六年押第三二五号の一、三)及び回転弾倉式真正けん銃一丁(昭和五六年押第三二五号の二)を没収する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、

第一  法定の除外事由がないのに、昭和五六年三月三日、大阪府大東市西楠の里町六番一二号文化住宅一階の廣渡正治方において、回転弾倉式改造けん銃一丁(昭和五六年押第三二五号の一)及び回転弾倉式真正けん銃一丁(昭和五六年押第三二五号の二)を所持した

第二  法定の除外事由がないのに、昭和五六年四月二日、大阪府四条畷市南野二丁目一三番一三号駐車場に駐車中の普通乗用自動車内において、回転弾倉式改造けん銃一丁(昭和五六年押第三二五号の三)を所持した

ものである。

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は判示第一の罪にかかる改造けん銃、真正けん銃は部品として解体されていたものを警察当局が発見、領置後、組立ててけん銃の型に仕立てあげたもので、その組立ては容易でなく、また組立てられて、けん銃の体裁をととのえても部品の不良、欠如などのため発射機能がなく、被告人もこのことを了知して廃棄するつもりで放置していたものであるから、判示第一の事実については無罪であると主張する。しかしながら、前掲各証拠によれば(1)右改造けん銃は被告人が昭和四七年ころにモデルガンを改造して完成させた数丁の改造けん銃のうちの一つであり、他の改造けん銃は前件の武器製造法違反罪で処罰されたり、銃砲刀剣類所持等取締法違反罪で処罰されたりした際捜査当局に発見、押収されたが、本件の改造けん銃のみ発見、押収を免れたものであり、被告人は過去にこの本件改造けん銃で二回試射してみたが発射機能に異常はなく、ただ後になつて引きがねの部分が具合い悪くなり、弾倉が自動的に回転せず、連発がきかなくなつたので、これが修理のため右改造けん銃をけん銃の本体、弾倉、引きがねなどに分解したこと、(2)次に右真正けん銃は被告人が昭和五二年ころ暴力団関係者から入手し、過去に二回試射してみたが発射機能に異常はなく、ただ二回目の試射のとき弾倉が破裂し、連発ができなくなつたため、これが修理、補修のため右真正けん銃をけん銃の本体、弾倉などに分解したこと、(3)被告人が右改造、真正各けん銃を分解したのは昭和五六年二月ころであり、この分解後被告人は右各部品を一括して、補修用部品若干とともにロッカーに入れ、施錠して判示場所に保管していたところ、これを判示日時に捜査当局に発見され、同所のロッカー外に置いてあつた多数のけん銃補修用工具とともに領置されたこと、そこで関係警察官が右ロッカー内のけん銃部品を選別、組立ててけん銃の体裁に復元し、仕立てあげ、鑑定を嘱託したが、その組立てには右各けん銃につき一時間を要したこと、(4)もつともこれらを分解した当の本人である被告人が組立てをするとすれば、部品の種類、型状、材質などから選別も容易であり、ねじ回し程度の工具でこれら部品をそれぞれ三、四〇分程度で元の各けん銃の状態に組立て復元することができるものと見込まれること、(5)かようにして関係警察官により組立て、復元された右各けん銃の現状は真正けん銃については連発はできないが、単発なら発射機能があること、他方改造けん銃は単発でも撃針打撃力不足のため、これに適合する実包を装填してもこれが撃発に至らないが、実包のきよう底部の撃針打撃位置に簡単な工作を施せば現状でも発射弾丸の有する単位衝突面積当りのエネルギーが銃口前五〇センチメートルにおいて計算上2.20キログラムメートル程度の発射機能を有するし、またけん銃側の補修としては撃針を鋭利にする、撃鉄バネの強度を補強する、あるいは弾倉の排きよう子を修復すれば発射機能を完全に回復することができ、しかもこれらの修理、補修には、通常入手できる部品、工具で、しかも本件のような改造けん銃を作りうる能力をもつてすれば極めて容易であること、以上の事実が認められ、これら、本件各けん銃の分解前の性能、部品の組立てによるけん銃復元の容易さ及び復元されたけん銃の現状等に加わえて、被告人はその経歴からしても銃砲製造の高度な知識、経験を修得した専門家ではなくして、単に銃砲に興味、関心を強く持ち、器思さも手伝つてこれまで改造けん銃を作つてきたりしたものであることを考え合わすと、本件各けん銃を解体したまま所持した行為はいずれも銃砲刀剣類所持等取締法三条一項所定のけん銃の所持に該当するものというべく、よつて弁護人の右主張は採用しない。<以下、省略>

(上田誠治)

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